伝統工芸士に教わる
豊岡杞柳細工かごつくり

東京オリンピックまで1年を切りました。日本が世界中から注目され、多くの外国人が日本を訪れます。日本での滞在中の過ごし方として、以前は「爆買い」と言われる購入型がメインだったのが、今は日本の古くからの伝統やMADE IN JAPANの素晴らしさを発見する体験型が増えてきたそうです。みなさんも富士登山や着物を着て観光地を歩く外国人をニュースなどで見かけたことはないですか?こんにちは、ゆいツアーデスクの出野上(いでのうえ)です。
今回の旅と暮らしを彩る講習会では、国内だけでなく世界中から絶賛される日本の伝統的工芸品の一つ、豊岡の杞柳細工(きりゅうさいく)のカゴとコースターつくりを伝統工芸士の小西久子さんから学びました。

正倉院に納められている豊岡の杞柳細工

杞柳細工の始まりは西暦27年。日本に帰化し、但馬の国を開いたといわれる新羅の王子、天日槍命(あめのひぼこのみこと)が伝えたと言われ、約1200年前に但馬で作られた柳箱(やなぎばこ)は、現在とほとんど変わらない形のまま正倉院御物として10数点納められています。江戸時代になると杞柳細工は軽くて丈夫の評判が知れ渡り、参勤交代での荷物の運搬や衣類の保管に適した柳行李(やなぎこうり)、薬を湿気から守る薬屋行李、大切な文書を雨から守る飛脚行李などが使われました。近代日本になると取っ手が付いたタイプの行李鞄(こうりかばん)やバスケット、室内装飾品など暮らしのあちらこちらに杞柳細工は使われ、みなさまも目にされたことがあるのでは?

水で浸らせると変化するコリヤナギ

今回挑戦するのは杞柳細工の基本となるカゴ。原料となるコリヤナギはヤナギ科の落葉低木で、適度な硬さがあるのが特徴です。まずは作業しやすいやわらかさになるよう、しばらくの時間、水に浸します。コリヤナギは乾燥すると折れやすいので、作業を行うたびに水で湿らせる必要があります。

作業しやすいやわらかさになったら、時計回りに、上、下、上、下と交互に編んでいきます。引っ張るのではなく、コリヤナギを円の中心に向かって指先でぐいぐい押していきます。

この作業を繰り返し、直径11㎝ほどの底が出来たら、カゴの形になるよう立てていきます。折り上げる部分を水に浸してやわらかくし、2周ほど編みながら角度をつけます。立ち上がりをつけたら、内側へ入り込まないよう注意しながら上へ上へと編んでいきます。

つなぎ目は裏側に隠し、途中で籐を編み込んでアクセントをつけます。籐は太く、少しふっくらしているので、指でぐいぐい押さず、下方向へそっと押しながら、ゆったりと編むのがポイント。

最後は10㎝ほど残してふちの始末を。半月状にカーブさせ、高さが揃うように仕上げます。

懐かしく愛らしい花のようなコースター

次は、カゴのフタにしても可愛いコースターに挑戦します。カゴと同様に編み始めが難しいため、途中まで編み上げたものをご用意していましたが、底編みからチャレンジされる方も。もくもくと集中し、あっという間に時間が過ぎていきました。コースターのフチの始末は花ビラのように大きく広げたり、小さめにしたり…お好きな色を選んでいただいたこともあり、より愛着がわくようです。小西さんの染色は月見草や栗のイガ、玉ねぎの皮で色付けをされているため、自然な風合いの優しい作品に仕上がります。

「全て手加減。型がないから同じものは出来ません」と小西さん。底を直径11㎝に編む方法は同じでも、手加減によって横に広がったりすぼまったり、1つとして同じものにはならないのです。お互いの作品を見比べながら「それ、素敵ね」「ここに何を入れる?」と会話も盛り上がりました。

伝統工芸品の未来はどうなる?

約1200年以上の歴史ある杞柳細工ですが、国際化の動きと円高により輸入品が台頭し、技術者の廃業が続き後継者不足に。今や豊岡には小西さんのような伝統工芸士は6~7人しかおらず、遠方まで出向いて杞柳細工を伝えられる工芸士は現在、小西さんのみ。
「作り手も少なくなり、材料を育てる人もいない。」柳を栽培し、刈り取り、越冬させ、皮をはぎ、水洗いし、天日で乾燥…重労働で手間ひまのかかる仕事なので、小西さんも自分の分以上は作れないそうです。
後継者と原材料不足…伝統的工芸品を守るため、通商産業大臣(現経済産業大臣)は伝統工芸品産業の振興に関する法律を定めました。製造の主な部分が手工業的であるもの、伝統的に使用されてきた原材料であること、一定の地域で産地形成されていること、など厳しい審査を経て伝統的工芸品として指定を受けると、伝統工芸品振興事業の援助を受けることが出来ます。豊岡杞柳細工も1992年に伝統工芸品の指定を受け、国や県・市からの援助により、編み組教室や技術者養成講習など開催し後継者つくりの活動を行っています。
豊岡杞柳細工の技術の継承と、世界のブランドに負けない価値があることを広めるために、小西さんや兵庫県杞柳製品協同組合の方々の活動は続きます。

ゆいツアーデスクでは旅と暮らしを彩る数々の講習会を毎月開催しています。ぜひ、ご参加ください。

伝統工芸士  小西 久子

経済産業大臣から国の伝統的工芸品として指定された豊岡杞柳細工の伝統技術を受け継ぎ、原料となる柳の栽培から染め、編み、仕上げ、販売まで一人で請け負う数少ない伝統工芸士。神戸国際会館地下2階「じばさんele(エレ)」で作品を販売している。兵庫県豊岡市在住。

真結の旅

私達がつくる“いまだかつてないバス旅”、 それが「真結(ゆい)」であり、風呂敷の結び方である“真結び(まむすび)”から由来したものです。 “本物”の旅を身体と心で感じていただき、そしてその感動をお客様が共有(結びつき)していただける“こだわり”のツアーブランドです。 観光地やお食事、そしてお宿と、“こだわり”だからこその工夫や心づくしを凝らしますが、決して“本物”=“高級”ではなく、質素な中にも“本物”を追求した旅程を、経験豊かなプランナーがご提案いたします。