富士山信仰の歴史・文化・民族
御師町の今昔を往く

 キンモクセイが香る季節となり、秋の気配がいよいよ濃くなってまいりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。真結(ゆい)企画担当の浅田です。

 このたび「真結」の冬旅が完成しました。テーマは「冬色に染まる旅」。冬でしか見られない景色、味わえない味覚など、日本の美しさを再発見する特別な旅を多数取り揃えました。

 今号では、かつて富士信仰の拠点であった御師町(おしまち)を訪ねる旅や北陸の冬の味覚と食文化に触れる旅などの宿泊のコース、毎年人気のカニ料理やクエなど食を堪能する日帰りコースなど、全12コースをご用意致しております。

 今回はその中でも、富士山信仰の歴史や文化、民俗に触れる旅にスポットを当てた旅の紀行文をご紹介いたします。

秀麗な姿と神秘性 祈りを込めて頂へ

神仏の住む霊山として、大地を揺らし荒ぶる山として、また、その美しい山容から、立ちあがる噴煙さえも燃える恋の象徴として、古今東西の歌詠み人の心を捉え、絵師に筆を執らせた富士山。

「人はなぜこんなに富士山に惹きつけられるのだろう」。素朴な疑問を胸に「ふじさんミュージアム」を目指した。緑の木立に囲まれた館は、富士山信仰の起源や変遷資料など収蔵数世界一。プロジェクションマッピングやタッチモニターなど最新の映像技術が相まって、2013年、世界遺産に登録された富士山の魅力を、時空を超えて指し示す。 世界遺産となってから、国内外を問わず、年間20万人を超す登山者が訪れるようになったが、実は江戸時代にもこれに勝るとも劣らない富士山ブームが起きたとか。爆発的なブームを牽引したのが「富士講」と呼ばれるグループで、彼らは富士山を信仰し、神さま仏さまがおわす富士山頂を目指した。ムーブメントは江戸を中心とした関東一帯で起こり「江戸八百八町に八百八講」といわれるほど、庶民の間で盛んになった。

 富士講の多くがまず向かったのは、富士山の登山口として古くから知られる富士吉田。鎮守の森にたたずむ「北口本宮冨士浅間神社」は吉田ルートの起点であり、町の入口にそびえ立つ金鳥居(ルビ:かなどりい)をくぐることは、富士講の人々にとって「聖地」に立ち入ることだった。五街道の起点である日本橋から富士吉田まで約120km。当時の庶民にとって旅の費用の工面など、けして簡単なものではなかったが、それにも増して心はやる刺激的な旅であったことが偲ばれる。

北口本宮冨士浅間神社
講社名を記したマネキと呼ばれる旗
吉田の火祭で活躍する神輿

旅のコンシェルジュ 御師(おし)が支えた富士山信仰

江戸時代、上吉田には金鳥居から富士山に向かう道の両側に、86軒もの御師坊が軒を連ねていた。御師とは富士山と富士講など富士山を信仰する人たちの間に立ち、信仰者に代わって祈りをあげ、登山の世話をし、自らの住まいを宿坊として提供しながら、富士山信仰を広める役割を果たす宗教者をさす。
メインストリートから長いアプローチの先に建つ「御師旧外川家住宅」は、御師町隆盛当時の面影を留める貴重な建物。それは奥行き80間ほどの長大な短冊形地割りの屋敷地に建てられ、主屋と裏座敷の2棟から構成されている。御師住宅の特徴ともいえる、奥行きのある細長い形状の屋敷である。このような屋敷が86軒! その昔、さんざめいた光景が点滅する。

中門をくぐると「ヤーナ川」と呼ばれる水路が流れていて、屋敷地の段差を利用した小さな滝が造られている。宿泊する富士講は到着や出発の際には、ここで水ごりを行い身を浄めたという。行者の衣装は白装束。寒さをしのぐ綿入れの表地は藍染め、内側は柿渋染め。機能性は軽くて温かい今日的なダウンジャケットとは比べものにならないけれど、ずっしり重い綿入れには、虫喰いを防ぐ先人の知恵が織り込まれている。

屋敷に脈打つのは、数え切れない困難を道連れに、富士山の頂を目指した人々の心意気。そしてそれを支えた御師の人間力が、最高の温もりをもたらしたのだと思う。

富士山の神さまに喜んでもらうため、富士講の人々は神楽を奉納した。御師自らが神楽を舞った時代もあった。
北口本宮冨士浅間神社に残る富士講の開祖・角行の立行石。この石上で30日の荒行をしたと伝わる。
冨士登山道吉田口
北口本宮冨士浅間神社の「冨士山」には、人と見立てた「テン」がない。神様、仏様がおられる山に人が登ってはいけないという時代の名残をとどめている。

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真結の旅

私達がつくる“いまだかつてないバス旅”、 それが「真結(ゆい)」であり、風呂敷の結び方である“真結び(まむすび)”から由来したものです。 “本物”の旅を身体と心で感じていただき、そしてその感動をお客様が共有(結びつき)していただける“こだわり”のツアーブランドです。 観光地やお食事、そしてお宿と、“こだわり”だからこその工夫や心づくしを凝らしますが、決して“本物”=“高級”ではなく、質素な中にも“本物”を追求した旅程を、経験豊かなプランナーがご提案いたします。