文字から広がる無限のパワー
小さな世界に刻む印刻講座 体験レポート

メールやSNSなどで簡単にやりとりできるようになりましたが、今もなお、想いを一文字一文字に込めたいという気持ちから手書きの文は大切にされているように思います。そんな想いのこもった手書きの文に「印」を添えられたら、さらに気持ちが伝わるのではないでしょうか。このたび、2018年春に開講した「書を楽しむ」講座の講師・藤村ちゅうら先生から、暮らしの中でたのしむ「印」の作り方を教わりました。手間ひまをかけて一刀一刀、ひたむきに手彫りする講座の様子をお伝えいたします。

石を彫ることに慣れる

今回は、青田石(せいでんせき)と言われる天然石を使用します。「天然石なので、彫りやすい部分と抵抗があって彫りにくいところがありますが、そこを乗り越えて彫り進めた先に得るものがあります」とのこと。
まず石の側面に直線と「W」の文字を彫る練習から。鉛筆を持つ要領で刀を持ち、刀の側面に中指をそっと添えて、中指の力で刀を進める早さや止めをコントロールします。
石に刀を当てた角度によって線の太さを変えることができ、さほど力を入れずに刀をすーっと押し出すことで線を彫ることが可能に。何回か練習するうちに、きれいな直線が彫れるようになっていきました。

刻み込む字体を決める

次は、「印」を作る前に文字をどのように配置するか、「印」の完成予想図を作る印稿作業に進みます。一辺2㎝にも満たない正方形におさまるよう、教わったデザインを参考にしながら刻む文字を決定します。装飾書体の「金文」、全体的に丸みがあってなめらかな流れを感じる「小篆」、印章のような角ばりがあって整然としている「印篆」など、多様な字体の中から選ばれた文字には個性が表れます。幸運が舞い込むように願いを込めた文字、名前からとった一文字、屋号など様々な想いが込められた文字が決定しました。

専用の雁皮紙(がんぴし)に墨をつけた筆でなぞって、青田石に転写。「印」を作る際には文字が反転するため、注意深く鏡でチェックして全体のバランスをとることも重要です。

一刀一刀に心を込めて

いよいよ転写した文字を刀で彫っていく工程へ。最初は緊張気味だったみなさまも、練習の成果もあって、ずいぶん慣れてきたようでした。ガリガリと石を刻む音も心地よく、もくもくと打ち込む方、談笑しながら取り組む方、お互いのできばえを確認しあうご夫婦…など、思い思いのペースで作業が進みます。

より完成度を上げるために

最終段階で先生から完成に近づけるための補刀や仕上げについてのアドバイスが。線の強弱を変えることで奥行きが出たり、石の外枠を少し削ると味わいが生まれたり。「もし失敗しても、紙やすりで削ればきれいに消えるの。人生と一緒よ」という先生の言葉に背中を押され、失敗を恐れることなく作業はクライマックスへ。

出来上がった「印」に朱肉を付けて押すと、すばらしい文字が浮かび上がりました。完成した「印」を見せ合ったり、捺印したものを記念に交換したり、和気あいあいとした時間が流れていきました。

印刻に初めて挑戦したという方も多く、日々の暮らしの中で今回お作りいただいた「印」がお役に立てたらうれしいです。心のこもった「印」を使うたびに、想いが伝わりますように。そして、次回の講習会もどうぞお楽しみにお持ちください。

藤村ちゅうら

13年間、アパレル会社でデザイナーとして勤務するかたわら、書道・ 篆刻を学ぶ。2002年より、自宅と文化サロンで教室を主宰。

真結の旅

私達がつくる“いまだかつてないバス旅”、 それが「真結(ゆい)」であり、風呂敷の結び方である“真結び(まむすび)”から由来したものです。 “本物”の旅を身体と心で感じていただき、そしてその感動をお客様が共有(結びつき)していただける“こだわり”のツアーブランドです。 観光地やお食事、そしてお宿と、“こだわり”だからこその工夫や心づくしを凝らしますが、決して“本物”=“高級”ではなく、質素な中にも“本物”を追求した旅程を、経験豊かなプランナーがご提案いたします。