兵庫県の西播地域は、国内最大の革の産地。その上質なレザーは、さまざまな有名ブランドで使われているほどなのですが、実はまだあまり知られていません。“その土地ならではのいいものを、より多くの人に知ってもらいたい”という願いを込めて、「レザー小物つくり講習会」を開催しました。革に関する知識を深め、革に触れて、手づくりの楽しさを堪能していただいたひとときの様子をお届けします。
姫路、たつののレザーは、全国シェアの約70%
講師は、兵庫県姫路市の夢前(ゆめさき)川沿いに工房を持つ、「M’s FACTORY(エムズ ファクトリー)」の小田さん。ふだんは、革製品の制作や修理、姫路観光に来られた方に向けてのワークショップなどを開催されています。
まず、革についての知識を深めていただくために、国内の革の産地についてのお話からスタート。日本の皮革3大産地は、姫路や龍野(たつの)など兵庫県の西播地域。歴史は飛鳥時代以前までさかのぼり、赤穂の“塩”と市川や夢前川の “水”がもたらす豊かな環境のもと、革産業が栄えたそうです。ちなみに、塩で揉んで、なめしたものが「姫革」と呼ばれる白なめし。昔は、高貴な方しか使えない貴重な革だったようです。
皮革3大産地の2つ目は、革職人の町と呼ばれた東京・浅草。3つ目は再び兵庫県にもどり、かばんで有名な豊岡市。なんと、全国のかばんの約7割が豊岡で生産されているといわれています。
毎日使いたくなる、小物つくり
この講習会では、日々の暮らしで活躍する、実用的なポーチやメガネケース、パスケースから作りたいものをお選びいただきました。
革の厚みや質感は、それぞれに適した革を使用。パスケースは両面使えるよう、4枚の革を縫い合わせて。メガネケースは、メガネの鼻置き部分を制作後、本体に取りかかります。ポーチはファスナーを付けてから、2枚の革をミシンで縫い合わせるという工程です。
縫う作業には、革用ミシンを用います。ぱっと見た感じでは、家庭用ミシンより重厚感があるのですが、基本的な使い方は同じ。裁縫のお好きな方にとっては、特に使いやすそうな印象でした。まずは、革のはぎれで練習します。縫い始めと縫い終わりは二重にして強度をつけたり、まっすぐ縫うために手元より少し先を見るなど、家庭用ミシンの使い方と良く似ています。革小物づくりには、縫う、貼る、カシメをつける、糊づけする、やすりで磨くなどの作業があり、小田さんからていねいに教わりながら、色とりどりのオリジナル小物を作り上げていきます。完成後には、お客様同士で作品を見せあったり、記念撮影をするなど、楽しい時間がすぎていきました。
革製品を長く愛用するために知っておきたいお手入れのコツ
お茶とお菓子を楽しんでいただく時間にも、革の取り扱い方法や選び方について、さまざまな質問が飛び交います。
多くの人が気になる「革の選び方」…種類によって頑丈かどうかが変わりますかという質問については、実は、どの革を選んでもそれほど変わりがないとのこと。
「革のお手入れ方法」についても関心が多く、わたしたちの肌と同様に、カサカサになってきたら革クリームを塗るのがポイント。ただし、色が付いてしまう場合があるので、事前に少し試してみることを忘れずに。さらに、クリームを塗り込む前に馬毛などで掃除を行えば、一段ときれいに仕上がります。茶色や黒の靴墨でもOK!
革の大敵は、湿気
大切なかばんであればあるほど押し入れにしまわれているケースが多いのですが、押し入れは、カビの繁殖に最も適した環境。大事にしまっておくのであれば、時折、風通しの良い場所に出してあげることがポイントで、乾燥剤を入れておくのもよいのだとか。一旦カビが生えてしまうと、革の内部に菌が入り込んでしまうため、中がニチャっとした状態になってしまうと修理は難しいため、カビが生えないように保管することが重要なのだと教わりました。
以上のように、この講座では、日常的に革製品に親しむために、すぐにでも試してみたいお話ばかり。革製品を購入することはあっても、自分でつくるとなるといろんな道具が必要で、なかなか敷居が高くなる…。この講習会は気軽に楽しみながら革と触れ合える貴重な機会、みなさまにご満足いただけたようです。最後に作り上げた革小物を手に、記念写真を撮りました。
これからも、イベントや講習会を通じて、地域のいいものを、神戸という場所でみなさまにお伝えできれば幸いです。