最初はなかなか言いなれずにいた「令和」という元号が、この2か月で少しずつ日々の暮らしになじんできたような気がします。あっという間に6月末。令和元年が半分を過ぎようとしていますが、いかがお過ごしですか?こんにちは、ゆいツアーデスクの出野上です。
量販店や100円ショップに、大量にモノがあふれている現代。そんな中、手になじむ自然のものを用いて、自分の使い勝手がいいように作られたモノは生活を豊かにしてくれる、そんな気がします。
今回は、兵庫県中西部に位置し製材・木工の地場産業が盛んな宍粟市(しそうし)在住のクラフト作家である島本契司先生から、カトラリーつくりを本格的に学びました。日々の生活で活躍するスプーンやコーヒーメジャーを作る様子をお伝えします。
木を削り出す、3つの道具
木を削るのに、今回は3つの道具を使います。刃先が丸いヘラのようなタイプと、刃先が平たいタイプの彫刻刀を2種類。そして、何にでも使える刃が斜めになったクラフトナイフです。今回は初心者でも使いやすいクラフトナイフで形を作り、細かい丸みや柄の部分には彫刻刀を使うことになりました。
彫る作業に入る前に、木片を削る練習からスタート。怪我をしないよう、刃先の進行方向に手を置かないよう細心の注意を払い、親指の腹でクラフトナイフを押し出すように少しずつ削ります。
彫刻刀は鉛筆を持つように持ち、クラフトナイフと同じように少しずつ木を削っていきます。「彫刻刀を持つのはいつ以来かしら?」と皆さんが思い思いに記憶をたどりながら、彫る練習が進んでいきました。
個性は、持ち手にあらわれる
道具の扱いに慣れてきたら、次は自分の作品となる木との出会いの時間です。木には、硬い柔らかいがあます。この日は、硬い木の中でもまだやわらかめで彫りやすい「クルミの木」を使用。クルミの木には油分が含まれており、自然に油が出てくるため、ツヤのある仕上がりになります。
その他、クラフトに適しているのはケヤキや山桜・ブナの木。杉やヒノキなどやわらかい木はカトラリーつくりには適さないそうです。
クルミの木を手にしたら、柄の形を決めます。丸い持ち手・平たい形・カーブを持たせたり三角形に近いものにしたり…。イメージする形が決まったら、デザインを鉛筆で木に描き、下書きに沿って削ります。
樹木は立った状態である縦方向に繊維が伸びています。その繊維の流れに沿って、少しずつ柄を回しながら削ります。硬くてなかなか刃が進まない箇所は、繊維の方向が一定の向きに流れていないところ。無理に削るとポキンと折れてしまうことがあるので、上下を逆さにし、逆の方向から彫っていきます。
会場のあちこちから、ガリガリと削る音が。みなさん、木を削る楽しさに没頭しておられたご様子でした。
すくう部分は、薄くなるよう慎重に
柄を削った後は、スプーンもコーヒーメジャーでもすくう部分を削ります。彫りやすいよう、すでにある程度のくぼみが彫られているので、講習会ではくぼみの外側と、すくう部分の裏面を好きな形に削ります。裏面の丸い部分は最も硬く、削るのも困難な場所。中心からふちの方に向かって少しずつ削り、角ばりがなく滑らかになるよう丸みをつけます。特にスプーンは、口に触れる部分が薄くなるよう意識して、慎重に彫り進めていきます。
磨いて、なめらかさとつややかさを
削り終えたら、サンドペーパーを手にし、作品を磨くというよりも削っていきます。サンドペーパーの粗さが目立つ40番から80番、120番、180番と徐々に種類を変えていくと細かい木粉が出て、スプーンの表面がどんどんなめらかになっていきます。
ごつごつした感じやひっかかりがなくなったら、ツヤを出すために油を塗ります。布にエゴマ油を染み込ませ、少しずつ磨き上げることで、吸い込んだカトラリーが落ち着いた深みのある色に変化していきました。その見事な変化に、会場では感嘆の声が。今回は、早く乾いてべたつきの少ないエゴマ油を使用しましたが、オリーブオイルでも代用できるそうです。
木のカトラリーを、永く愛用するために
最後に、完成したカトラリーを大切に使っていただくために、島本先生からアドバイスをいただきました。使い始めは一度水につけて、2~3日はしっかりと乾燥させてから使うこと。温風でヒビが入ることがあるため、食器乾燥機は使わないこと。カトラリーの表面がカサカサしてきたら、植物油を塗り込むと再び潤いが増して、ツヤが出てくること。そして何より、大事にしまい込むのではなく、毎日使って、味のある自分だけのカトラリーにしてほしい、とのことでした。
ゆいツアーデスクでは、これからもみなさまの暮らしを彩る講習会を開催していきます。ご興味のある講習会がございましたら、ぜひご参加ください。