ほっと一息つきたいとき、食事のお供に、日本人にとっては当たり前の日本茶。お湯を注ぐだけのティーパックやペットボトルのお茶など、気軽にお茶など気軽にお茶を楽しめるようになりましたが、やはりきちんと淹れたお茶は、味も時間も、そして気持ちまでもが格別に感じられるもの。
この度は、茶葉の品種や産地を正確に鑑定する全国茶審査技術協議会で最高段位を持つ酢田先生に教わりながら、さまざまな茶葉に触れ、お茶の香りに包まれた講習会の様子をお伝えします。
知っているようで知らない、お茶のこと
「お茶ってなに?」と聞かれて、ぱっと答えられる人は少ないのではないでしょうか。
お茶の多くは「お茶の葉」から作られます。基本的には、摘み取った茶葉の成分がそれ以上変化しないよう酵素などの働きを止めるために、葉を蒸します。その後、蒸した葉を篩い(ふるい)、揉み、解きほぐしてから乾かし、針状に伸ばすという作業が行われます。
昔、これらはすべて手作業でしたが、現在では機械化が主流となり、効率的に作られています。知っているようで知らない茶葉の製法を、須田先生から教わりました。
見たこともない茶葉を知る
皆さまの目の前には、おなじみのものから、めったに見られないお茶まで、さまざまな茶葉が。分かる茶葉から順番に当てていきますが、その中には見たこともないお茶もたくさん。高知でしか生産されていない「碁石茶(ごいしちゃ)」や抹茶の原料である「てん茶」なども目にすることが出来ました。
「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれる摘み取ったままの茶葉から、茎や葉の選別により、色々な種類のお茶が生まれます。これらは「不発酵茶」と呼ばれ、煎茶や玉露、抹茶、ほうじ茶などがそれにあたります。一方で、茶葉を摘み取った後に発酵することで「ウーロン茶」や「紅茶」といった「発酵茶」が生まれることも知りました。
荒茶、煎茶、芽茶、玉露、茎茶、番茶など全20種類ものお茶を学びました。
お茶をひときわ愉しむ7カ条
次に、お茶をよりおいしくいただくためのコツを教わりました。
なんといっても、大切なのは「水」。水道水でもよいのですが、しっかりと沸かしきることがポイント。硬度の高いミネラルウォーターは不向きだそう。
続いて「お湯の温度」と「量」です。湯呑みや湯冷まし等でお湯を冷ましてから急須に煎れるように心がけます。「茶葉の量」も重要で、1人当り60ccで約2g、だいたい大さじ1杯強を目安にします。少し冷ましておいたお湯を急須に注ぎ、1分ほどそのままに。ゆっくりと葉が開くのを待つ、この「待ち時間」も大事なポイントの一つです。
そして、お茶を味わうための「湯呑」。煎茶などは浅めの器がお茶の色をきれいに見せてくれます。番茶やほうじ茶などには、少し大きめで素朴な味わいのある湯呑がおすすめ。熱めのお湯で淹れるため、持ちやすい形とも言えます。
最後に一番大事なことは、「相手にお茶をおいしく煎れてあげたいという気持ち」なのだそう。やはり、心を込めることが何よりも重要なのですね。
普段、当たり前のように煎れている日本茶ですが、過程の全てに意味があることを知り、より丁寧に煎れたいという気持ちになりました。
お茶を心から味わう
せっかくなので、見せてもらった茶葉の中から数種類を飲み比べていただきました。4人で1チームになり、参加者ご自身の手で1種類ずつ煎れていただきます。
はじめは、身近な煎茶から。煎茶の蒸らし時間は約1分、その間に生産量の多い都道府県のことや年間の茶葉生産量など、お茶にまつわる話を聞きながら過ごします。お茶が入ったら、まず香りを確かめて、一口。口の中に広がるお茶を感じながら、もう一口。いつもより、ゆっくり味わう貴重なひとときです。
続いて、発酵茶であるウーロン茶を。こちらは1分半の蒸し時間が理想。なんと発酵する時間によって香りが変化していくそうです。
そして、一度は口にしてみたいと思う最高級品の玉露。蒸らし時間は2分。あまりにもおいしくて、全員が2煎目、3煎目を味わっておられました。2、3煎目をよりおいしく飲むポイントは、1煎目で使った急須のそそぎ口に茶葉が固まるのを防ぐため、底をポンポンとたたくこと。そうすることで、茶葉が詰まって空気が通らず、葉が蒸れるのを防ぐとよいそうです。
その後も、発酵茶(紅茶)、サンルージュと呼ばれる品種茶、抹茶の原料になる碾骨(てんぼね)、番茶、ほうじ茶と9種類のお茶を飲み比べ。茶葉による味の違いを学ぶことができました。
日常の中に当たり前にあるお茶の良さに気付き、お茶の世界にゆったりとひたる「睦月のお茶会」。特別に用意されたお菓子とともに、あっという間に時間が過ぎてしまうほど充実した内容でした。